松下君枝……沢　木　まゆみ
松下健治……松　田　信　行
木田　梢……ゆ　　　　　き
佃　　光……岡　田　智　宏
ター君………しらとまさひさ
向島　夫……なかみつせいじ
向島　妻……佐々木　基　子
夫ではない男……石川　雄也
小川…………木　村　圭　作
おばチャン…しのざきさとみ

監　督………佐　藤　　　吏
企　画………福　俵　　　満
脚　本………佐　藤　　　吏
撮　影………飯　岡　聖　英
編　集………酒　井　正　次
録　音………シネ・キャビン
音　楽………大　場　一　魅
助監督………小　川　隆　史
スチール……津　田　一　郎

微妙にゆらぐある夫婦の関係を軸に、大胆奔放に情事を楽しむ女たちの痴態を描いた新人佐藤吏監督のデビュー作。沢木まゆみ、ゆき、佐々木基子ら人気女優が顔を揃え、ユニークで新鮮なセクシームードが味わえるさわやかな一篇。
健治と君枝の夫婦は久しぶりに夜の営みをした。結婚してすぐに健治は心臓を患い、家で療養生活の毎日。君枝はブティックに勤め、いつも不機嫌な健治とは微妙にすれ違う毎日が続いている。翌朝ゴミ捨てに出た健治はマンション隣室の向島家に見知らぬ男が入っていくのを目撃した。
ブティックのオーナーの梢は夫と別れた後、ター君と呼ばれる年下の男とのセックスに夢中だった。じつは君枝は取引先のメーカーの佃と密かに関係を持っていた。その日も仕事を終えた二人はホテルで情事を楽しんだ。君枝は夫婦生活で空いた心の隙間をそこで埋めようとしているかのようだった。
翌日。君枝は出勤途中に突然吐き気を催し、病院に寄った。ター君と梢はその隙にブティックの店内で激しく燃えた。その頃、健治はベランダから向島家の奥さんの不倫を目撃した。しかもマンションの前では夫がウロウロしていた。そんな時、玄関のチャイムが鳴った。訪ねてきたのは佃だった。 　その夜、健治は君枝に佃が来たことを話そうかどうか迷ったが、結局やめにした。昔、怪獣の着ぐるみを着る仕事をしていた彼はいつかヒーロー役をやりたいと願っていた。だが、病気にかかった今の彼にはそれを実現させることは叶わなかった。
健治は向島家の不倫現場を覗きながら、家に入れないでいる夫が自分であるかのような妄想にかられた。一方、君枝はホテルで佃と会った。そして自分たちの関係が健治にバレたようなので別れたいと言った。佃は健治に会ったことを君江に告白した。そして自分は健治にはかなわないと言った。帰宅した君枝は一緒に食べようと、健治にケーキを差し出した。その後、君枝はまた吐き気を催した。健治は君江の妊娠を知った。
健治はまた働くことを決め、昔の仲間の小川と怪獣ショーの舞台に立ったが、今の体ではこの仕事はやはり無理だった。帰り道、健治は相変わらず家の前でモジモジしている向島の夫の胸ぐらを掴み、行き場のない怒りをぶちまけるように「しっかりしろよ」と怒鳴った。その夜、健治は数日前に佃が家に来たことを君江に話し、彼女が妊娠したのは佃の子供じゃないかと疑った。家を飛び出した君江はいつしか結婚前に健治が彼女のために橋の上から飛んでみせたことを思い出していた。
翌朝、同じ橋の上に佇む君枝の前にかつて健治が着ていた怪獣の着ぐるみが現れた。君枝は「着ぐるみを着て子供達に囲まれてる健治が好きだった」と泣きながら怪獣を殴った。着ぐるみの姿は消えていつしか健治になった。健治は君枝を抱き寄せた。君枝は、健治が飛んだあの時、結婚を心に決めたことを話した。健治は「俺の子を産んでくれ」と優しく彼女を抱いた。
数年後。健治と君枝の間にはヒカルという息子ができた。相変わらず怪獣の役をやりながらも、ヒカルとヒーローごっこをする健治の顔は幸せにあふれていた。