メイン・タイトルと同時に“ピンク体位に、はずかしく!!”なんていうサブタイトルが出るだなんて、まったく記憶になかった。ただただ香坂和子に魅了されてしまうそれだけのAVです。いつの時代にもいる「何でキミみたいなコがAVに?!」な女優と出会えます。この“素人本番シリーズ”はジャッキー監督とともに始まった彼の代表シリーズなのです。
香坂和子(吉川マリ名義も)は1980年代前半にエロ雑誌のヌードグラビアに登場。
前職がトラックの運転手というまさかのガテン系で、可愛らしい顔だちとのギャップに僕(AVライター)たちはカッチョイイ! とテンションが上がったものです。雑誌編集者やAV監督が恋しちゃう「おじさん殺し」にして
「業界人殺し」キャラの元祖と言えます。のちにKUKI作品で名作を連発することとなる舞阪ゆいもその系譜に名を連ねます。
OLがタイムカードを押すような上品な物腰でビデオやグラビアの撮影現場に現れるので、業界ノリのおじさんたちが「おはよーっス」なんて軽く返せなくなってしまう、そんな女の子たちがこの系統です。何でキミみたいに美しいだけではなく利発で常識人で社会に適応できているのに、
大股開きやFUCKシーンを生業にしているの? と自分のレベルにはないアイデンティティや美意識を見せつけられ、彼女を尊敬、同時に恋してしまうのです。 どんな職場でもこんな構図で女性に惚れてしまうことってありますよね? この作品が世に出た1984年はアダルトビデオの黎明期。まだ単体女優というものが存在しなかった。のちに美少女メーカーのパイオニアとなる宇宙企画が
『ミス本番・田所裕美子19歳』の大ヒットとともにその歩みを始める年なのです。 街にはレンタルビデオショップが急増し始め、
トルコ風呂がソープランドへと改称されたの1984年。AV女優の呼称はなく、名のあるモデルの多くは当時の僕たちの主力エロ本である「ビニール本」「裏本」「自販機本」出身。フレッシュなAVアイドル的存在が“美少女本番”“素人本番”の惹句とともにデビューする可愛コちゃんたちだったのです。
「えっ、こんなコがアダルトビデオに?!」
の始まりは、「AV」の略称はない「アダルトビデオ」の時代です。
「昭和38年生まれの20歳です」から始まるモノローグとともに
香坂和子は登場。海辺、緑を背景に全裸のイメージショットで売りの貧乳があらわになり、胸とは裏腹の太い太腿すなわちどっしりした下半身がなんとなくトラック野郎いや姐ちゃんかなという景観です。 芝生に腰を下ろして
レイモン・ラディゲの詩集を開いて音読するくだりは、ジャッキーならではのスノッブ臭が漂います。いつの時代も、主演女優にモテようと思って、俺ぁインテリだろ? とひけらかしたくなっちゃうわけですよ、単体女優を好きに料理できるディレクターってね。
そして、
香坂和子って声がいいのです。舌ったらずの甘いエロキューションも中年キラーぶりに輪をかける! 女子から見ると、あの子なによ男子に媚売って、と反感買うスレスレの感じです。 すっかり僕たちが和子ちゃんに蕩けてしまったところでオナニーシーンです。まぁ、この「うぶ」全開の自慰にさらにさらにヤられちゃいます。
こんな子がAV出てオナるだなんて?! この一点だけでおかずになることを保証しましょう。
クライマックスのベッドシーンは随所にテロップ。“経験の少ない私のセックス”“せいいっぱいの私”“あまり強く、早く、動かないで”。当時のAVで多用されたエロ本のグラビア的手法です。竹藪にごっそり捨ててあった
雨ざらしのエロ本を中学校時代に拾って興奮した遠い季節がよみがえります。
近年のAVでは絶対に出会えないタイプです。AV女優のツイッターやブログを見て安心して業界に入ってくる今のコたちの「ルンルン」のないその清純さ加減。いかに1984年当時、多くが
香坂和子に狂っちゃったかがここで明らかになります!