ただし、これらの卑弥呼に対する悪い噂を裏付けしてしまったようなビデオがリリースされていたのも確かなことだ。

 『この娘が日本で一番です』『若奥様 卑弥呼』『若奥様、もう一度』の3作は小路谷秀樹監督による作品だ。
 すでに媒体への露出も全開、桜樹ルイと並ぶダイヤモンドのトップアイドルとして君臨していた卑弥呼のイメージダウンとなる作品になってしまっていた。
 『若奥様 卑弥呼』では、監督の小路谷氏は過労でダウン。その無責任さにあきれた卑弥呼が撮影をボイコットするという事件がそのまま収録されているのだ。
 したがってビデオ後半になると代役の無名モデルが起用され、そのまま本番をして終わるという奇妙な作品となった。
 これでは、卑弥呼の本番シーンを期待したファンにとっては、あからさまな裏切り行為だ。
 同時に巨額の借金を抱え、経営状態は斜陽にさしかかったダイヤモンド映像を象徴する作品であったように感じられる。

 

 同時、ダイヤモンド映像の専属モデルは村西御大の命令によって酒とプライベートセックスを禁止されていた。

 この当時、筆者は野坂なつみと田中露央沙をインタビューしたことがあり、まぎれもない事実として聞いている。
 このシステムだと、月に2、3回のビデオ撮りでのセックスを楽しみになるため、より気持ちの入った本番シーンが撮れるという。その禁酒、禁セックスを命じられなかった唯一の専属モデルは卑弥呼だったのである。
 村西御大にとっては、卑弥呼だけ特例を認めてでも、彼女を専属にしておきたいという気持ちがあったのだろう。
 4作目『黒くてぶっといのが大好き』10作目『この体に男のロマンあり』最終作となる17作目『愛と腰づかいの果てに』で、村西御大が卑弥呼を撮っている。
 さすがに天才と思わせるダイナミックな本番ではあった。
 しかし、卑弥呼も村西監督もお互いに思い入れはなく、他の村西御大自身が撮ったコほどの作品には仕上がらなかった。